本の虫のおうち生活

雑食の読書好きによる感想

警視庁幽霊係「恋する死体」天野頌子

警視庁幽霊係第2弾!死体だって、元は普通に生きていた人間なんだから恋だってするだろ!?

恋する死体 警視庁幽霊係 (祥伝社文庫) [ 天野頌子 ]

価格:680円
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あらすじ
 元刑事の探偵・新堂が急死した。心不全による病死だと思われたが、不審な点が多く見つかる。
刑事時代の後輩・清水に頼まれた幽霊係・柏木は調査に乗り出すが、そこには臓器売買の可能性があり…。

感想
 探偵・新堂武彦がかっこいい!!バカみたいだけど、それが一番残った。もちろん、自分が追っかけていた事件が気になってはいるだろうけど、刑事時代の上司の奥さんを心から愛して、彼女が幸せでいるのか気になって成仏できない彼が、素敵だ。
こんな風に心の底から愛される彼女も幸せだけれど、でも本当は柏木が最後に言った通り「こんなに人を好きになれる人を見つけた彼が幸せ」なのかもしれない。死んでも尚、相手が幸せであるのかを心配する恋は中々ないと思うから…。良いよねぇ。

 事件としては、臓器を勝手に移植されたり、自分の好きな人の出世に邪魔だからと殺されたり、血なまぐさい展開。恋に狂っている人は、他の人の価値観では測れない。だって、彼・彼女はそれで幸せなんだから…。どれだけ周りが”かわいそうな人だ”と見たとしても、本人が幸せなのだとしたら、他人の意見は彼らには届かない。人道的にどれだけおかしくても、それで彼らが幸せなら、それが正解なんだ。

 その犯人に勝手に愛されていた相手・榊原”ドクターカイボウスキー”にとってもそう。彼は、変死体を解剖するのが何よりの楽しみ。どれだけ他人に愛されようが、非難されようが、自分の幸せにはなんの関係もない。良いな。そんな風に生きてみたい。大好きなキャラクター。そのまま、彼のまま死ぬまで生きていってほしい。

 結局、幽霊・新堂は愛した彼女を見守り続けることを選んだ。それも正解。”成仏した方が幸せだ、とか、彼女もそんなこと望んでない”とか、他人の言うことなんて本人には関係ないんだよ。自分が幸せだと思う選択をした方が正解なんだ…。

 一番の救いは、清水刑事の中のいいご家族。娘さんは無邪気で可愛いし、奥さんは、旦那さんを理解して、何故か、柏木を健康体にする食事を作ることを心掛けている素敵すぎる家族。真っ当な人々を見るとやはり心が安らぐな…。
 
 最後に柏木君、確かに少しうるさかったかもしれない、イライラしていたのかもしれない、でも嫉妬している彼女に「お前、小姑みたいだな」は絶対にダメ!!ありえないよ。ディズニーランドに連れて行って。例え、周りからは30過ぎた男が一人で来ていると思われてもね…。